前回の記事では、日本の教育の
「残すべき点」と
「見直す視点」について整理しました。
現場では
知識の定着や基礎学力を重視する一方で
「正解を出すこと」に
偏りやすいという課題も指摘されています。
※これからの教育を支える視点として
現行の学習指導要領を引用します。
そこで本記事では
「社会に適応した学校教育改革」
という思考の視点に注目し
- 問題をどのように設定するか
- どのように考えを構造化するか
- どう検証し、説明するか
という5つの力を整理します。
小学校・中学校・高校それぞれの段階で
どのように育てられるのかも
あわせて考えていきます。
よろしければ、前回の記事である
【教員必見】日本の教育は何を残し、何を見直すべきか?〜学校教育の未来を考える教育改革〜
をご覧になると、理解が深まります。
5つの教育改革案
前回の記事で
5つの教育改革案を提唱しました。
※改革を促したい根拠として
PISAの学習意識調査を引用します。
具体的には、これらの教育的要素が
重要になるのではないかと考えています。
①問題を設定する力
②抽象化する力
③モデル化する力
④検証する力
⑤説明・説得する力
①問題を設定する力
「問題を設定する力」とは
「何を解くべきかを決める力」
のことを指します。
教育現場では
「とりあえず対策を考える」ことが先行し
本来の課題が見えにくくなる場面もあります。
具体例:
「学力が落ちている」
↓
❌「学力を上げる方法」を考える
⭕️どの教科・どの単元で
なぜ変化が起きているのかを整理する
次回のテストの目標設定をしても
「何分勉強する」というような
回答をする子どもが多いように感じます。
なので
「原因を特定する視点」を
育てることが目的の一つと考えられます。
教育例:
・問題文がない問題を解く(何を問われているか考える)
・現象から問いを作らせる(正しい課題を設定できる)
②抽象化する力
「抽象化」とは
「個別事例から共通構造を抜き出す力」
のことを指します。
具体例:
「各クラスで自主学習の提出率に差がある」
↓
・提出の構造、掲示などの呼びかけ
・意欲性の工夫、数値での変化の視覚化
などを、考えさせる教育をする
理由:
一度整理した考え方が
別の場面でも応用しやすくなる
という利点があります。
自分の考えを持つことや
創意工夫を考えることで
課題解決能力の向上にも
期待できます。
抽象化ができると
別の場面にも応用しやすくなるため
学びの汎用性が高まる可能性があります。
教育例:
・話し合いでの言語化を育てる
・生徒主体の学校やクラス、部活動経営
③モデル化する力
「モデル化」とは
「頭の中の仮説を立てる力」
のことを指します。
具体例:
「様々なデータを具現化」
↓
数式、図、フローチャート、シミュレーション
などを、活用する教育をする
理由:
考えを可視化することで
他者と共有しやすくなり
検証につなげやすくなる場合があります。
特に数字で物事を表すことは
視覚的に自身へ取り込みやすく
イメージがしやすくなります。
学習例:
・運動能力などの数値から読み取る(暗黙知ではない)
・数値などの変容の要因を考える(なぜ?を持たせる)
④検証する力
「検証」とは
「仮説が正しいか確かめる力」
のことを指します。
具体例:
「運動能力の向上の取り組みを実践する」
↓
5月と10月の比較をする
条件を変えて比較する
などの、材料比較と実践を育てる教育をする
理由:
「思い込みを排除し、改善を加速させる」
現場では
「うまくいった・いかなかった」
で終わってしまい
なぜそうなったのかが整理されない
ことも少なくありません。
結果だけでなく
仮説とのズレを振り返ることで
改善の精度が高まる可能性があります。
学習例:
・分析と検証結果の相違を評価する
・結果ではなく、検証過程を重視する
⑤説明・説得する力
「説明・説得」とは
「考えたことを他人に動いてもらえるよう伝える力」
のことを指します。
具体例:
「試験前は徹夜はしない方がいい」
↓
論理的に説明する(脳構造的なもの)
図解や具体的なストーリーを示す
などの、説得性を持たせる教育
理由:
設計的な役割を担う場面では
考えを分かりやすく伝え
周囲の理解を得ることが求められる
場合があります。
技術や知識の獲得だけではなく
今までの課程をフィードバックする
という役割も担っています。
学習例:
・暗黙知ではなく、調査内容を用いて説得する
・行動を促すような説明をする
若手教員が考える「学習への取り入れ方」
私が教育現場で大事にしていることは
二つあります。
一つ目は
「失敗してもいいから自分たちで決める」
ことです。
原則として、「クオリティは求めない」
ことを自分の中で決めています。
二つ目は
「自分が先導して手本を示す」
ことです。
一つ目ができない原因として
「経験が少ない」ということが
考えられます。
なので、自らが手本となるようにしています。
「失敗してもいいから自分たちで決める」
これは
先に述べた5つの力を育むのに
直結していると考えています。
具体的な活用場面の例は
「中3の送る会の内容を決める」
時の例を挙げたいと思います。
当時の教員で
クオリティを高く求めてしまう方がいました。
歴代の能力が高い先輩たちと比べ
「当たり前」を固定的に捉えていました。
そのような環境であったので
生徒たちは萎縮し
まともな話し合いや活動ができず
常に「怒られないように」と
行動していました。
そして、「中3の送る会の内容を決める」時に
私の教育現場で大事にしている
「失敗してもいいから自分たちで決める」
という雰囲気で話し合いを進めました。
当時の先生と事前に話していたことは
「あのような生徒たちだから、まともな意見は出ないだろう」
という考えでした。
話し合いが始まってからは
案の定、何をすればいいのかも分からず
沈黙していました。
そこで私が、昨年の例を出しながら
「何でもいいから意見を出してみようか」
と言葉掛けをしました。
ポツポツと意見が出始め
「お〜いいね〜」
「あ、なるほどね」
と私が囁き、続いて
「一人、最低3つは意見を考えてみようか」
と投げかけました。
というのも、中々意見を言えない生徒が
いたためです。
しかし、そのような雰囲気が功を奏したのか
全員が3つ以上意見を出していました。
ただ、「ビデを撮影をトイレで行う」や
「服装は全身タイツで行う」など
採用しかねる意見もありましたが
否定せず、クオリティを求めないことを
原則に、私は笑っていました。
そのように、今までどんな活動でも
沈黙だった集団が、一気に明るくなったのです。
やはり、子どもたちには
「認めること」や「褒めること」が
大事なのだと改めて感じました。
「自分が先導して手本を示す」
この学習の仕方は、先ほど例を出した
「失敗してもいいから自分たちで決める」
ことの手本がない場合に必要だと感じています。
ここでは、ある部活動の顧問をしていた時の
話を例として挙げたいと思います。
その年は、先輩が一人しかおらず
学習的にもメンタル的にも
困難を要する生徒でした。
その下の後輩は5人。
中3が引退してからというもの
「次に何をすればいいか分からない」
「周りを見てどう動けばいいか分からない」
という思考だったのか
毎日がダラダラで、先生がいなければ
活動はしない(したくない?)という部活でした。
当時の顧問は私の他に
部活動の競技が専門の顧問が
一人いました。
その顧問の先生も
「なぜできないのか」
「普通分かるでしょ」
という指導の先生でした。
私には生徒たちの気持ちが分かります。
初めてのこと、慣れていないことは
分からないものです。
それでも中3が引退するまでの数ヶ月間
一緒にやってきたと感じると思いますが
中学生とは先輩についていくだけで精一杯です
突然、先輩たちがやっていたように動けと
言われても難しいものです。
ましてや、中2の先輩もいっぱいいっぱいです
私はそのような状況を見た時に
「自分が先導して手本を示す」ことを
しないといけないと分かりました。
ランニングの声出しは一番大きく
移動や準備、休憩は走る
用具の準備を指示
全ての手本を示し
「走るよ」「これ準備して」と
言葉掛けをしました。
また、技術を教えるときは
まず褒めてから内容を端的に伝えるように
しています。
中2の生徒の代わりをしているようなものですね。
おそらく手本をまねすることで
これからも行うべき行動の見通しが
持てたのではないかと感じています。
現に、ダラダラの雰囲気から
活気が生まれたように感じます。
教育段階別(小中高)の教育方法
日本の教育は
専門分化が遅いという
捉え方もできます。
それに加え
基礎知識獲得や学力平均思考を
重視する傾向があることも
否めません。
そこで、教育段階別の教育方法の
有効的な内容を説明したいと思います。
小学校段階
小学校は
「土台作り」の時期です
規律・協調・基礎学力を維持しつつ
・「なぜ?」を歓迎する学習
・答えが複数ある課題
・観察→仮説→発表の流れ
このように
「問いを立てる」学習を目的とし
こうした姿勢を大切にすることが
学びにつながる場合があります。
中学校段階
中学校は
「思考の型を教える」時期です
小学校の学習に加えて
・論理的な思考(理由や根拠)
・データの見方
・モデルの活用(図、表、関係性)
このように
「考え方」を強化することで
学びにつながる場合があります。
例として、数学×社会
理科×技術
国語×ディベート
などを組み合わせることが
一つの方法と考えられます。
高等学校段階
高等学校は
「専門性と設計」の時期です。
これまでの一律型から
選択肢を広げることも一案です。
・探究必修
・ビジネス/技術プロジェクト
・レポート/プレゼン評価
このように
設計→検証→説明を
回していきます。
若手教員によくあるFAQ
Q1.「問題を設定する力」は、授業の中でどう育てればよいのでしょうか?
生徒に問いを与えるだけでなく
現象や資料を見て「何を疑問に思うか」を
考えさせる活動が有効です。
学習は自らの疑問から生まれ
その疑問を解決する過程のことと捉えることもできます。
例えば、写真・グラフ・ニュース記事などを提示し
「この中で疑問に思うことを3つ書く」などの
活動を取り入れることで
問いを立てる力が育ちやすくなります。
また、疑問を出すことにも練習がいるので
初めは、生徒の好きなものや
行事のことなどを取り上げると
問題設定力が高まると考えられます。
Q2.説明・説得する力を育てるために、授業で意識すべきことは何ですか?
生徒に根拠を示して話す習慣をつけることです。
「なぜそう思うのか」「どんなデータがあるのか」を
必ず説明させることで
説得力のある説明ができるようになります。
初めは、生徒の得意なまとめ方で行うと
根拠を示して説明をするというハードルが低くなる
見方もできます。
具体的には、文章で表現する生徒もいれば
動画、図解、表、アンケート、ストーリー構成
アニメ・漫画風、写真、例え話などなど
Q3.意見を言えない生徒が多いクラスでは、どうすれば話し合いが活発になりますか?
最初は自由発言ではなく
- 一人3つ意見を書く
- ペアで共有する
- グループでまとめる
など、段階的に発言できる仕組みを作ると
発言しやすい雰囲気が生まれます。
また、ブレインストーミングのように
質より量の意見を大事にしたり
意見を肯定したりなどの雰囲気作りも
重要になってきます。
Q4.思考力を重視すると、知識の定着が弱くなるのではないでしょうか?
必ずしもそうではありません。
知識を「使う場面」を授業に取り入れることで
理解はむしろ深まる可能性があります。
知識は「覚える」というよりも
「知りたい」という感情の中で
自然と身につくものだと考えると
思考力を重視した授業での知識の定着の仕方が
イメージしやすかと思います。
※こちらの記事もぜひ参考にしてください。
→【教員必見】知識記憶から考える力を見る時代へ〜思考・判断・表現の評価観〜
※文科省の「思考・判断・表現」の評価資料を
参考にしてください。
まとめ
本記事では
これからの学校教育で重要になる可能性がある
「5つの教育改革」について整理しました。
具体的には次の力です。
- 問題を設定する力
- 抽象化する力
- モデル化する力
- 検証する力
- 説明・説得する力
これらは単なる知識習得ではなく
「社会の変化に対応した力」を
育てる教育の視点と言えます。
最も重要なポイントは
子どもが自分で考える経験を増やすことです。
そのためには
- 失敗してもよい環境をつくる
- 子ども自身に決めさせる場面をつくる
- 教員が手本を示して思考の型を見せる
といった指導が大切になります。
子どもが「正解を当てる学習」だけでなく
問いを立て、考え、検証し、説明する学習を
経験することで、学びの質が高まる可能性があります。
まずは大きな改革を行う必要はありません。
日々の授業や学校活動の中で
- 生徒に問いを考えさせる
- 理由や根拠を説明させる
- 図や表で考えを整理させる
- 結果と仮説の違いを振り返らせる
といった小さな思考活動を積み重ねることが重要です。
こうした積み重ねが、子どもたちの生きる力を育て
これからの社会に適応できる学びへと
つながっていくのではないでしょうか。
ここまで読んでいただいてありがとうございます。
拙い文章だったと思いますが
次回も読んでいただけると幸いです。







コメントを残す