「自閉症児への関わり方が分からない」
「パニックやこだわりにどう対応すればいいのか悩んでいる」
特別支援教育の現場で
このような悩みを感じている教員は少なくありません。
実際に、「自閉症 支援 方法」や「特別支援教育 関わり方」
といったキーワードで検索する方も多く
対応に迷う場面は日常的にあると言えるでしょう。
パニックやこだわりは本当に「抑えるべきもの」なのでしょうか?
軽減する方法はあるのでしょうか。
本記事では、「自閉症児への関わり方」や「支援のコツ」に
焦点を当て、パニックやこだわりへの具体的な対応方法を
整理していきます。
※子どもの自己肯定感を高める記事も参考にしてください。
→【教員・保護者必見】ウェルビーイング教育の最新動向と実践
例〜子どもの自己肯定感を高める学校づくり〜
自閉症とは何か?
「自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder: ASD)」は
対人関係が苦手・強いこだわりといった特徴をもつ
発達障害の一つです。
近年では、早ければ1歳半の乳幼児健康診査で
その可能性を指摘されることがあります。
自閉スペクトラム症には、対人関係やこだわりの特性が
きわめて強い状態だけでなく、これらの特性が少しでも
あることによって生活に支障を来し、福祉的・医療的サポートが
必要な状態まで幅広く含まれます。
最近の調査では子どものおよそ20~50人に1人が
自閉スペクトラム症と診断されるともいわれています。
男性に多くみられ、女性の約2~4倍という報告があります。
どうして自閉スペクトラム症になるのか、その原因は不明ですが
生まれつきの脳機能の異常によるものと考えられています。
「育て方が悪かったの?」「しつけの問題?」と
悩む方がいますが、そうではありません。
これまでの多くの研究から親の育て方やしつけ方などが
原因ではないことがわかっています。
自閉スペクトラム症が疑われるお子さんには
次のような特徴がみられます。
・視線が合わないか、合っても共感的でない
・表情が乏しい、または不自然
・名前を呼んでも振り向かない
・人見知りしない、親の後追いをしない
・ひとりごとが多い、人の言ったことをオウム返しする
・親が「見てごらん」と指さしてもなかなかそちらを見ない
・抱っこや触られるのを嫌がる
・一人遊びが多い、ごっこ遊びを好まない
・食べ物の好き嫌いが強い
・欲しいものを「あれとって」と言葉や身振りで伝えずに
親の手をつかんで連れて行って示す
など
※引用元:自閉スペクトラム症とは?
通常学校の自閉症児は?
自閉症と診断されている子どもの割合は増加しており
特別支援学校のみならず、通常学校の特別支援学級や
通級指導をしている子どもにも多く見られます。
※文科省:特別支援教育の現状に関する基礎資料
を参考にしてください。
特別支援学校に勤務している、もしくは勤務していた
教員であれば自閉症への理解があると言えますが
通常学校での勤務のみの教員では
なかなか自閉症児への関わり方や支援の仕方が
分からないと思います。
そのため子どもがパニックを起こしてしまったり
行動の改善が見られないために不適切な指導が
続いてしまったりと支援・指導のあり方に
困っている教員も少なくないのではないでしょうか。
また、一概に自閉症と言っても様々な特性があり
一人一人特徴が違います。
さらに、広汎性発達障害(自閉傾向の特徴がある)などの
自閉症と診断されたわけではなかったり、精神遅滞などの
特徴を併せ持ったりしていると、たちまち支援・指導の
仕方に見当がつかなくなってしまいます。
そのような教員のために共通して使える支援・指導の
行い方を次項で説明したいと思います。
自閉症児への共通した3つの支援・指導
この点に関しては
今まで私に色々と教授していただいた先輩先生方の教えと
私自身の経験に基づいて、私なりに導き出した答えです。
必ずしも、完璧な支援・指導ではないことをご了承ください。
1つ目は、「子どもにやってほしいことを言葉掛けする」です。
自閉症児には、たくさんの言葉掛けをされると
頭の中で処理ができなくなり、パニックに陥って
しまうことがあります。
よく言われるのが「指示は端的にしましょう」です。
「座ります。」「白い線の内側を歩きます。」
「この円の中で踊ります。」「丸の部分にノリをつけます。」
など、端的な指示を出すことが有効です。
なぜかというと、「〇〇すると△△になるから、⬜︎⬜︎しよう。」
では、言葉掛けが長すぎて理解が難しく、結局何をしたらいいのか
分からなくなってしまうからです。
また、「子どもにやってほしいことを言葉掛けする」
という言い回しもポイントす。
端的な指示でも「◯◯しません。」「◯◯はダメです。」
と言われても、正しい行動は何なのか分かりません。
では、具体的な例を話していきます。
自閉症児によくある特徴として「放送音が苦手」という
子どもが割とたくさんいます。
避難訓練のサイレンが鳴り、放送で避難のアナウンスが
流れる場を想定してみましょう。
NG例)
教員:「今日は避難訓練があります。
前みたいにサイレンが鳴っても
メガネを投げないようにしましょう。
床に大の字になるのもダメですよ。」
生徒:「はい!分かりました!」
放送:「う〜〜〜〜〜〜〜〜〜」(サイレン音)
生徒:「うわー。もうダメだー。」
(メガネを投げる)
(床に寝そべって暴れる)
教員:「だから違うでしょ!静かにしなさい!」
生徒の立場からすると
①サイレンが鳴ったら何をすればいいのか分からない。
②先生に言われたことは、「メガネ」と「床に大の字」
という内容しか頭に入っていないわけです。
OK例)
教員:「今日は避難訓練があります。
放送が鳴ったらどうするんだっけ?」
生徒:「静かに放送を聞く!」
教員:「そうだよね。」
「では、地震ですと言われたら?」
生徒:「机の下に隠れる!」
教員:「正解!さすが〇〇さん!」
「あとは、地震が落ち着いたら校庭に避難するからね。」
生徒:「分かりました!お・は・し・もだよね!」
教員:「そうです!では、今日の昼にあるから頑張りましょう!」
自閉症児でも「何をすべきか」は分かっているのです。
不安な気持ちを「正しい行動」で消してあげましょう。
ここまでの指導ができれば、仮に突発的な避難放送があっても
「サイレンだ。どうするんだっけ。」という対応で大丈夫です。
また、日頃から「この前の避難訓練立派だったから
次にサイレンが鳴っても大丈夫だね。」となります。
ポイントは「子どもにやってほしいことを言葉掛けする」です。
2つ目は、「とにかく褒める(認める)」です。
これについては、自閉症児であっても小学1年生でも
中学生でも共通していることと言えます。
しかしながら、自閉症児の行動は正しいことばかりではありません。
学習への遅れや奇声・奇行など
年齢にそぐわない言動が多いでしょう。
そのような状況では、褒められるものも褒められない
と思いがちですが、自閉症児の場合は「認める」が大事です。
何か嫌なことがあった時、彼らは奇声を上げるかもしれません。
しかし、頭ごなしに指導するのではなく
「嫌なことがあったんだね。」「こうすると落ち着くよ。」
などと、言動を許容してあげてください。
そのようにすることで、少しずつ落ち着いてくるでしょう。
彼らにとって、頭ごなしの指導は状況を悪化させることはあっても
改善することはないでしょう。
ここで私の実際の例を挙げましょう。
私自身、物腰柔らかい性格なので、パニックなった子どもに対して
別室(周囲の環境から遠ざけて刺激をなくす)に連れていき
「大丈夫か。」「そんな時もあるさ。」「次はこうしていこうな。」
などと言葉掛けをしていました。
周囲からの刺激(ストレス)が少ないので
少しずつ落ち着いていき、教室にも戻れます。
しかし、ある年、相担(特別支援学校でともに学級を持つ担任)から
「この生徒はダメなことをビシッと言わないと効かないから
ガツンと指導した方がいいよ。」と言われたので
「あ、そういう指導が効果的な子どももいるんだな。」と思い
来たる時に強めの指導をしたことがありました。
結果、パニックは治まるどころか悪化していきました。
いつまでも泣き続け
フラッシュバックした言葉を繰り返しています。
そのような経験から、自閉症児への指導は「認める」
ことが重要なんだなと改めて実感しました。
また、「褒める」という部分は
コミュニケーションと捉えることができます。
前述した通り、彼らは年齢に釣り合わない特性を持っているので
褒められる部分が正直少ないです。
それでも、「おーよくやったね。」「さすが。次も頼むよ。」
などと褒めると喜びます。
そして、正しい行動なんだと学習していきます。
その子どもが中学生であっても、小学校低学年と接しているように
振る舞うととても効果的です。
ポイントは「とにかく褒める(認める)」です。
3つ目は、「無視する・相手にしない」です。
さて、3つ目にしてとても残酷な支援・指導法の紹介です。
しかしこれは、未就学児や小学校低学年に指導する
「今は何の時間ですか。」と同じ意味です。
自閉症児の特徴として、「空気を読めない」「自分本位」
という特徴があります。
具体的に言うと、「いつまでも同じ話を続ける」
「他人の会話に割って入る」「心の声が漏れている」
などの特徴があります。
そのような時は、「話題をすり替える」
「今何をしているか、次にどのような行動を取ればいいのかを
確認させる」「静かにしますと言う」などの言葉掛けのことを
「無視する・相手にしない」と言っています。
具体例を挙げましょう。
ある中学生の自閉症児は、不安なことがあると
1日中、色々な先生に話します。
「〇〇があるけど大丈夫かな。」「僕、〇〇が心配なんだ。」
と1日中、暇なく、何度も繰り返します。
その時に、「△△だから大丈夫だよ。」
「そんな時は⬜︎⬜︎すればいいんじゃない。」
などと不安を軽減しようと丁寧に説明すればするほど
実は、不安を煽っていることになってしまいます。
なぜなら、彼の頭の中からは「◯◯」という
不安要素が消えていないからです。
「〇〇」という不安要素をなくすには
「今日の給食は〜〜だね。楽しみだね。」や
「昨日のテレビのあれ面白かったね。」などと
話題をすり替えて、不安要素を無視します。
そうすると話題も増え、不安要素も軽減されます。
良かれと思って丁寧に説明していることが
実は逆効果になることもあります。
ポイントは「無視をする・相手にしない」です。
若手教員によくあるFAQ
Q1.自閉症児のパニックは止めるべきですか?
無理に止めようとするよりも、落ち着ける環境を整えることが
有効な手段の一つです。
原因(音・不安・見通し)を探り、どのような対応をとるべきか
考えることが第一歩と考えられます。
また、別室などで落ち着かせている間は、言葉掛けを控えることも
大事な要素となります。
なぜなら、パニック状態の時に指導をしても
全く情報が入っていかないからです。
かえってパニックを助長させてしまいかねません。
自然な時の流れに任せて、本人の熱が冷めるのをじっと待ちます。
Q2.こだわりは直すべきですか?
すべてを無理に変えるのではなく
生活に支障がある部分だけ調整するという考え方もあります。
黙々と作業に取り組んでいるのであれば
時間を決めて行い、適宜休憩を入れるといいでしょう。
また、自由に休憩と言われても何をすればいいのか分からない
と感じるのも自閉症の特徴です。
そこにストレスを感じる人もいます。
なので、時間ごとにスケジュールを決めてあげることで
本人が自己選択できないリフレッシュの時間を
与えることができます。
さらに、「こだわり」と言うと一般的に「ルーティーン」と
捉えることもできます。
そこは、静かに見守ってあげたいです。
しかし、やるべきことに中々移行できない場合は
「そろそろ始めようか。」や「後◯秒ね。」などと
優しく言葉掛けしてみましょう。
Q3.通常学級でも同じ支援は使えますか?
基本的な関わり(視覚化・簡潔な指示・肯定的な声かけ)は
通常学級でも応用できる場面が多いと考えられます。
そもそも通常学級であろうと特別支援学級であろうと
「アスペルガー症候群」なり「学習障害」なりと
名前のついている障害特性を抱える生徒がたくさんいます。
私の考えでは、障害に名前をつけすぎて区別しすぎているな
と感じています。
障害診断がされていても、されていなくても
学習に困難を抱く生徒がいれば、困難を克服させようと
何かしらの「合理的配慮」を施すことは
教員として、大人として、人として
当たり前のことだと感じています。
本記事では、「自閉症児への関わり方の3つのポイント」を
紹介しましたが、一人一人の生徒を見つめて
生徒に合った支援を少しずつ見つけていけばいいと
考えています。
Q4.自閉症の子どもはみんな同じ対応でいいですか?
同じ診断でも特性は大きく異なります。
一人一人に合わせて調整することが前提になります。
ですが、それでは自閉症児への支援・指導のポイントを
話す意味がないので、万人に共通する基盤となるポイントを
今回は紹介しました。
この3つはやって間違いはないと言えます。
その上で、一人一人の特性に応じた支援・指導を模索していって
欲しいと思います。
まとめ
■この記事で分かること
- 自閉症児の行動には「理由」があるという視点
- パニックやこだわりは抑える対象ではなく
理解と適切な対応が必要なものであること - 支援の基本となる3つの関わり方
①やってほしい行動を端的に伝える
②とにかく褒める・認める
③無視する・相手にしない(適切に関わりを調整する)
■最重要ポイント
最も大切なのは、
「問題行動を直す」のではなく
「子どもが安心して活動できる環境を整えること」です。
行動だけに目を向けると指導が強くなりがちですが
背景にある「不安」や「分かりにくさ」に目を向けることで
関わり方の選択肢が広がると考えられます。
■次に何をすべきか
まずはすぐにできることとして
以下の3点から始めてみてはいかがでしょうか。
- 指示を短く・具体的にする
→「〇〇しよう」と行動を明確に伝える - できていることを1日1回は言葉にする
→小さな成功を積み重ねる - 困った行動に対してすぐに指導せず、一度立ち止まる
→「なぜこの行動が起きたのか?」を考える
特別支援教育に「これが正解」という方法は一つではありません。
だからこそ、「この子に合う関わり方は何か?」と
考え続けること自体が支援の第一歩とも言えます。
今日の関わりを少しだけ変えることで
明日の子どもの姿が変わるかもしれません。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
拙い文章でしたが、次回も読んでいただけると嬉しいです。







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