「この勉強、将来何の役に立つの?」
生徒からそう聞かれたとき
あなたはどう答えますか。
近年、「キャリア教育」「基礎的・汎用的能力」
「4領域8能力」といった言葉が
学習指導要領や進路指導の場面で
頻繁に使われています。
しかし、その中身を
具体的に取り入れている学習内容は
意外と多くないかもしれません。
なぜ今、学校教育と将来の仕事を
結びつける視点が重視されているのでしょうか。
部活動や日々の授業は
本当に進路につながっているのでしょうか。
この記事では
キャリア教育の考え方を整理しながら
「今の学びがどのように将来へつながる可能性があるのか」
を具体的に考えていきます。
キャリア教育とは?
キャリア教育とは
社会的・職業的自立に向けて
必要な基盤となる能力や態度を
育てることと位置付けられています。
※文科省のキャリア教育についてはこちら
学校教育(小学校〜大学)の中で
自分らしい生き方を実現できるよう
学習していくわけですが
子どもたちにとっての学校の授業は
「将来、何の役に立つの?」と
疑問に思う子どもも少ないと思います。
正直、私自身も子どもの頃を思い返すと
古文を勉強して何になる?
ワークを解いて何になる?
と感じていたことを思い出します。
このような感じ方は
現代の子どもたちでも
同じようなことを
感じているのではないでしょうか?
また、先生方においても
子どもからこのような質問がきたときに
何と答えればいいか分からないという先生も
少なからずいると思います。
みなさんは「何のために勉強をするのか?」
という問いに何と答えますか?
私の考えは2つあります。
1つ目は
「自分の興味・関心を見つけるため」です。
数学が得意であれば
将来的に数字に強い仕事へ就くことが
選択肢の一つになります。
他にもグループワークが好き
一人で黙々と作業をすることが好き
タブレットを活用することが好き
などと自分の能力を理解することにも
役立つ側面があると思います。
2つ目は
「学習の仕方を学ぶこと」です。
将来、やりたいことがあっても
どうやって資格を取ればいいのか
興味がないこともやらなければいけない
などと目標への向かい方が分からないのでは
社会で生きていくことは厳しいかもしれません。
みなさんは「イチロー選手」を
ごぞんでしょうか?
メジャーリーグでも活躍した
プロ野球選手は「宿題をやる意味」
についてこのように語っています。
「大人になってやりたくないことを我慢してやるための訓練」
元教員であった私はこのようなことを
思いつきもしませんでした。
「勉強をすること」自体が社会で生きていく
ためには必要であり
「理科の知識を得て、テストで点数を取る」
という考え方は重要ではないのかもしれません。
では、キャリア教育とは
どんなことを勉強し
どんな力を身につけ
なぜ必要なのでしょうか。
※主体的な学習に対する記事はこちらから
キャリア教育に必要な力
まずは、前提として
「自分らしい生き方を実現する」
ことがキャリア教育では重要な
考え方と言えます。
そのために自分自身について
理解しなければなりません。
自分の価値や興味・関心
考え方や行動の仕方などです。
それらを踏まえた上で
キャリア発達のために必要な
4つの基礎的・汎用的能力を解説します。
※詳しくは文科省の解説をご覧ください。
→キャリア発達に関わる諸能力(4領域8能力)
〜4つの基礎的・汎用的能力〜
(1)人間関係形成・社会形成能力
この能力については
価値観や考え方の異なる他者と
円滑な人間関係を築き、自ら他者に働きかけ
新たなコミュニティーを形成できる能力と
捉えられています。
特に、他者理解やコミュニケーション能力
リーダーシップ、チームワークなどが
必要な力として挙げられます。
子どもたちに
「社会人になる上で必要な力とは何だと思いますか」
と尋ねると
「コミュニケーション能力」だと答える子どもが
多くいると思います。
では、キャリア教育に必要な
コミュニケーション能力とは
どのような能力なのでしょうか?
定義としては
「単なる話上手ではなく
多様な他者の意見を聴いて理解し
自分の考えを正確に伝えて信頼関係を築き
協働して課題を解決する力」です。
必要な力としては、傾聴、アサーション
非言語的コミュニケーション(表情やマナー)
が含まれます。
多くの子どもたちの理解だと
誰とでも話せるとか
意見を言えるとか
まとめられるなどの力と
捉えられている側面があると思います。
しかし、コミュニケーション能力で大事なことは
「相手を尊重すること」であると言える側面があります。
集団で主張できる人たちの意見だけでは
コミュニケーション能力とは言えないという
考え方もできます。
では、どうすればいいのか。
先生方が職員会議で行なっている流れを
子どもたちにも促すことができれば
いいと考えています。
職員会議のように
何かを決めるときにグループになって
様々な意見を出し合います。
このときに、否定しないことや
質より量などの約束事を設けて
行うとさらによいでしょう。
意見を出し合ったら
グループごとに集約します。
そのあとは、学級で決める内容なのか
学年なのかで、学級員や学年委員の生徒が
みなの意見を尊重して決断する。
また、そのときに注意したいのが
「決まった内容を尊重する」ことです。
そのような取組を取り入れることで
コミュニケーション能力が形成されると
考えられます。
その経験を増やしたいことを考えると
学活で生徒総会の資料を読み合わせたり
行事の準備をしたりなどの時間で
話し合い活動を減らしてしまうのは
勿体無いと感じてしまいます。
(2)自己理解・自己管理能力
この能力については
自分が「できること」「意義を感じること」
「したいこと」について
主体的に行動することができる能力と
捉えられています。
特に、自己の役割の理解、自己の動機づけ
忍耐力、ストレスマネジメントなどが
必要な力として挙げられます。
学習を主体的に行えるようになるためには
自己の「興味・関心」に基づくことが
一番分かりやすいと思います。
しかし、自己の興味・関心から
自己理解を深めようと思っても
「何が好きか、何をしたいか分からない」
という子どもも多いと思います。
そんな子どもたちに私たち教員は
「将来やりたいことがないのか。」
「どうするんだ。」と
漠然とした回答をしてしまうことがあると思います。
子どもたちがそのような考えでも
仕方がない側面があります。
なぜなら、学校では
みんなが同じ歴史の勉強をして
同じような絵を描き
ワークを解いてテストでは
記憶できたかどうかの評価をするという
仕組みだからだと言える一面があります。
できるだけたくさんの
社会見学やボランティア活動
職場体験や就業体験などの
社会経験を増やして
子どもたちの興味・関心の幅を
広げてあげたいと切実に感じます。
というのも
勉強が苦手な生徒でも
職場体験では生き生きと動き
先方からも生徒からも
3日間では足りないと言われたことがあるくらい
社会に出ての経験というものは
貴重なものだと捉えることができます。
学校で「社会に出てから・・・」
「働くというのは・・・」と言っても
実際に経験をしないと自己理解は
深まりづらいという側面があります。
(3)課題対応能力
この能力については
仕事をする上で様々な課題を発見し
分析から適切な計画を立てて
課題を解決することができる力と
捉えられています。
特に、情報の理解・選択・処理や
要点を理解する力、課題の追求・発見・評価・改善
計画を立てることなどが必要な力として
挙げられます。
※課題解決についての記事はこちらから
PDCAサイクルという言葉ならば
理解しやすいかと思います。
PDCAサイクルという言葉を使わずとも
学校現場では「次にどうする」という
指導を常に子どもたちへ投げかけていると
思います。
先生方にとっては「改善すべきこと」
を子どもたちに考えさせるために
このような指導を行うと思いますが
子どもたちにとっては
改善すべきことよりも
楽しいことや楽な方へ向かいたい
という考えになりやすいと捉えることもできます。
というのも、指導をされたとしても
その場だけ怒られる
そのあとは普通に生活ができる
給食も食べられる
友達と遊べる
部活ができるというように
指導されても「困らない」から
その後につながりにくいという
側面があると思います。
職業体験や就業体験を通して
企業などから「評価」をもらうことができれば
子どもたちもより「自分ごと」と
捉えられると思います。
日本の学校現場ではそういった
「就職」へ向かう教育が遅いという
特徴があると見ることもできます。
支援学校では早い段階から
年に2回ほど数週間かけて
職業体験を行います。
そうすることで自分に合った職業や
自分に合った支援を施してくれる企業を
数年かけて見つけることができます。
(4)キャリアプランニング
この能力については
働くことの意義を理解し
多様な生き方に関する情報を適切に
取捨選択・活用しながら
主体的に判断して生きていく力と
捉えられています。
特に、学ぶことや働くことの意義や
役割の理解を持てること
将来設計などが必要な力として
挙げられます。
これからの人生の中で
どのようなことを成し遂げたいのか
「人生の目的」を考えることが
重要と捉えることができます。
前項でも述べたように
日本の学校はキャリアについて考える
時間が圧倒的に少ないという面があるので
大学を出てから内定をもらった企業で
働かざるを得ないということも
少なくありません。
そのようになってしまうと
職を転々としたり
自分の専門性を活かしきれなかったり
してしまう側面もあります。
実際に職業体験を増やすことが難しくても
自分の将来設計について考えることは
できると思います。
実際に将来設計の学習をすると
入学すべき学校や必要な免許が分かったり
給料や仕事内容が分かったりと
少しでもイメージを持つことができている
様子が見られました。
将来設計をした生徒の中には
結婚して子どもが生まれて
子どもが陸上で全国大会に行って
オリンピックに出て・・・
などという発想の生徒もいましたが
家庭を持つこととはどういうことか
陸上の習い事にはどれだけのお金がかかるか
など、キャリアとは違う方向ですが
人生について考える機会を持てた
生徒もいました。
部活動と進路指導からの視点
キャリア教育を進めていくのに
有効と言える取組の一つに
「部活動」があります。
部活動での活動全般を考えると
基礎的・汎用的能力の4つを
網羅していると捉えることができます。
基礎的・汎用的能力を振り返ると
- (1)人間関係形成・社会形成能力
- (2)自己理解・自己管理能力
- (3)課題対応能力
- (4)キャリアプランニング能力
となります。
これらはすべてを部活動にあてはめると
- (1)異学年とのやり取り
主将を主としたチーム運営
チームとしての合意形成 - (2)自分の能力分析
目標を定める
体調を管理する - (3)長期的・短期的な練習計画
大会を振り返ってのこれから
技能獲得への情報収集 - (4)部活動の意義を考える
将来的な目標の設計
以上のようにキャリア教育に必要な力を
育むのに部活動が有効な手段の一つになることが
頷けることができると思います。
私が野球部を担当していたときは
生徒たちの「強くなりたい」という
チームの合意があったため
練習にも主体的に取り組み
練習メニューの改善にも
思考を凝らしていました。
水泳部を担当していたときの生徒は
勉強があまり得意ではなかったのですが
練習には一生懸命でした。
その生徒は色々な職を経験していましたが
その全てが「自分の興味あること」への
挑戦でした。
(さすがに不動産→消防→飲食店は驚きました)
進路指導でもやりたいことが見つからないなら
とりあえず普通科を勧めることも
多いかと思います。
私自身もそうでした。
以前は、転職をしたくても
自分自身の資格や専門性がなく
これほど「好き」がないことを
恨んだことはありません。
私自身のそのような経験もあり
子どもたちには好きなことを考えさせたり
興味ある職業の資格などを調べさせたり
することが必要だと感じています。
まとめ
学校教育に必要な「キャリア教育」
について解説してきました。
子どもたち目線で考えると
学校での勉強は将来への意味を
見出しにくいという側面があると
考えられます。
「将来、計算能力が必要になる」
とは言っても、他の勉強内容は
どうなのでしょう?
注目すべきは「学習内容」ではなく
「学習への取り組み方」と捉えることもできます。
そして、キャリアについて
できるだけ早くキャリア発達を促すことが
重要だと捉えることができると思います。
主体性を育てるために
専門性を高めるために
将来の幸せを掴めるために
教師のみなさんは
どのようなキャリア教育を進めていきたいですか?
生徒のみなさんは
将来のために「好き」を見つけられますか?
※幸福を求める記事はこちら
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
拙い文章でしたが、次回も読んでいただけると嬉しいです。








コメントを残す