なぜ今、学校教育で「思考力・判断力・表現力」が
これほど重視されているのでしょうか?
近年、学習指導要領の改訂やAI時代の到来により
「知識記憶型の学力」から「考える力を育てる教育」への転換が
進んでいます。
しかし現場では、依然としてテスト中心の評価が主流であり
「本当にこれでいいのか?」と疑問を感じている教員も
多いのではないでしょうか。
また、PISA2022の結果を見ると
数学的リテラシー・・・OECD内:1位、81カ国中:5位
読解力・・・・・・・・OECD内:2位、81カ国中:3位
科学リテラシー・・・・OECD内:1位、81カ国中:2位
と日本の学力の高さが伺えますが
現場では、勉強が苦手な子ども、勉強しない子ども
支援が必要な子どもが多いように感じます。
※PISA(OECD生徒の学習到達度調査)の結果はこちらから
本記事では、「知識記憶から考える力へ」という
教育の流れとともに、「思考・判断・表現をどう評価するのか」
という本質的な課題に迫ります。
※学習指導要領の全体像について詳しく知りたい方は
こちらの記事を参考にしてください。
日本の学校教育の歴史
※引用元:戦後日本の学校教育の変遷
〜教育制度と学習指導要領を中心に〜
戦後の教育
遡ること第二次世界大戦の敗戦を受けて
日本の教育は軍国主義から民主主義へと
変わっていった。
その2年後の1947年に教育基本法が作られ
「人格の完成」や「平和な社会をつくる人」を
育てることが目標になった。
また、6・3・3・4制(小・中・高・大)の
学校制度が始まり、男女平等や教育の機会均等も
重視された。
そして、学習指導要領は先生が授業を考えるための
手引書として作られ、子ども中心の教育や
民主的な社会をつくる教育が重視された。
独立と経済成長期の教育
1952年4月28日にサンフランシスコ平和条約が発効し
約7年に渡るアメリカ(GHQ:連合国軍最高司令官総司令部)による
占領が終了して主権を回復した。
それから、教育は国の管理が強まり
学習指導要領や教科書は国が決めるようになった。
1958年の学習指導要領改定では、基礎学力や科学技術教育が
重視され、道徳の授業も始まった。
ここで、教育が「経験重視」から「知識重視」へと
変わっていった。
さらに、高度経済成長により進学率が上がり
受験競争が激しくなった。
その結果、テスト中心の教育や子どもの問題行動が
増えるなどの課題が生まれた。
安定成長期の教育
1970年代以降、社会の変化により教育も多様化したが
いじめや不登校などの問題が増えた。
また、1977年の学習指導要領では
「ゆとり」と「人間性」を重視し
授業時間を減らして子どもが主体的に学ぶ教育に変わった。
平成期の教育
1980年代以降は、個性を大切にし
一生学び続けられる「生涯教育」が重視された。
知識だけでなく、「考える力」「判断する力」「表現する力」
などを重視する新しい学力観が生まれた。
学校週5日制や学校選択制、中高一貫校などが導入され
教育の自由化や多様化が進んだ。
ゆとり教育により授業内容が減ったが
学力低下が問題となり
「確かな学力」を重視する方向へと見直された。
21世紀の教育
現在の教育では、「生きる力」が重要とされている。
これは、自分で考え、判断し、問題を解決する力や
人と協力する力のことである。
「生きる力」を達成するために以下の3つの力を
バランスよく育てることが目標とされている。
◯知識・技能
◯思考力・判断力・表現力
◯学びに向かう力・人間性
また、「主体的・対話的で深い学び」が重視され
学校と社会が協力して子どもを育てる教育へと
変化している。
現代とこれからの教育
AI やインターネットの発展により、教育も大きく変わり
「個別最適かされた学び」や新しい教育(EdTech)が進んでいる。
※学習指導要領のポイントについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
※AI時代の学びについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
「考える力」を評価する時代へ
日本の学校教育の歴史を見ていくと
1945年〜1958年の14年間は試行錯誤の段階
→基本的な学校教育の基盤
1958年〜1977年の20年間は知識重視(学力・テスト中心)
→いじめや不登校などの問題行動が増える
1977年〜ゆとり教育、考える判断する表現することの重視
教育の自由化・多様化が進む、学力の低下
「生きる力」や「主体的・対話的・深い学び」を重視
AIの発展、個別最適化の重視
1977年頃から、「考える力」を育てる教育が
少しずつ進んできました。
知識記憶だけではなく、課題解決能力を身につけることが
これからの時代に必要な力と言えます。
しかし、50年に渡り知識重視ではない教育を施しているのに
現実の学校現場を見ると、評価は「テスト中心」の
原点方式から変わっていません。
テスト中心ということは「正解重視」であり
思考・判断・表現の評価とは異なると言わざるを得ないでしょう。
では、なぜ、教育の内容が変わっているのに
評価方法は変わらないのでしょうか。
テスト中心の評価から変わらない理由
様々な考えや背景があると思いますが
理由としては主に3つ考えられます。
1つ目は、短時間で多人数を公平に評価できるのが
「テスト」だからだと言えます。
教員の業務を考えるとテストに頼ることが
効率的だと捉えられます。
2つ目は、入試制度の影響です。
高校や大学入試では、点数で選抜するという仕組みなので
どうしても、比較しやすいテスト中心になりがちです。
3つ目は、教師の負担です。
考える力を評価するには、記述問題やレポート
発表などのパフォーマンス評価が必要になります。
一人一人の評価をつけるとなるとものすごく時間がかかります。
しかし、評価を子どもたちに伝える現代の通信票には
観点別評価や道徳・総合・所見などの記述があり
この点では昔よりも明らかに進化しています。
今後、少しずつ評価の在り方が変わっていくと考えられますが
入試制度が大きく変わらない限り
テスト中心の評価は完全になくならないと考えられます。
現代社会の変化が著しい理由
考える力を評価するように教育が変わり始めている理由は
著しい社会の変化が影響と捉えられることができます。
では、なぜ、ここまで変化が著しいのでしょうか。
結論を言うと「複数の変化が同時に進み、
相互に関わり合っているため、加速度的に変化している」
と捉えることができます。
近年では特に、ICTやAIなどの技術革新が爆発的に進化しています。
これにより、情報伝達が瞬時に行われ、世界中に拡散できます。
また、AIが人間の作業を奪う時代にもなってきました。
グローバル化が進み、知識の価値もより一層低くなり
学び続けることや考えることが生きていく上で重要になっています。
様々な職業も生まれ、正解のない人生設計が可能になったことも
社会の変化の連鎖に影響していると言えます。
考える力が育たないと社会では生きていけない?
現代の学校教育が考える力を育てるよう設計されているので
考える力が乏しいと将来、生きていけないのではと
不安になる人・焦る教員もいるかと思います。
結論を言うと、考える力が乏しくても
社会では生きていけます。
思考・判断・表現力や課題解決能力がなくても
決まった手順で進める仕事やマニュアルが整った仕事などが
一定数あり、将来0になる確率は極めて低いと言えます。
そういった意味で生きていけないということは
ありませんが、社会や職場の変化の対応に弱くなったり
選択の幅を狭めたりすることの可能性はあるでしょう。
また、変化に適応できるかできないかの差が
生きやすさに直結することもあります。
学校教育で進められている教育は
「すごい人材を育てる」ことを目的とするよりも
「どんな環境でも最低限困らない力」を身につけることに
あると捉えることもできます。
最後に少しだけ厳しい現実を言うと
AIなどの発展で「考えなくていい仕事」自体が
減る可能性が非常に高いです。
AIに仕事が代替されないように
AIにはできない考える力を学校で身につけたいところです。
若手教員が考える学習と評価の在り方
授業は「詰め込み型」&「反復」
まずは、考える力の育成と学力についてですが
授業では、「基礎知識の詰め込み」が大事だと考えています。
なぜなら、考える力をつけたいがために
まだ学習していない内容の構造に深く取り組むと
時間がかかってしまいます。
以前、中学1年生の「文字と式」の単元で
「文字を用いて表す」学習をしているときに
黒板に棒を書いて文字式を考えている授業がありました。
先生の上手な授業展開があり
「あっなるほど」となるような素晴らし授業でした。
しかし、「n」自体が何なのか
文字式で表したことが何なのか
一次方程式でつまずいてしまうなど
理解を深めることができないまま
その後に繋がってしまいました。
「気付き」を重視してしまうことで
肝心な「学力」を身につけるための反復練習の時間が
少なくなってしまったのです。
このことから、授業では教えるべき事柄を
無理のない程度に詰め、授業内で反復する時間を
確保することが重要だと考えます。
実際にテストで高得点を取るためには
反復した学習が必要ですよね。
では、考える力はどのように評価すれば
いいのでしょうか。
反復学習の中で、どのように取り組んだか
変容したことは何か、何を感じたか
次回への改善は何か、どう工夫したか
など「単元の内容を考える」のではなく
「どのように学習をしたか」について考えることで
課題解決能力が身につき、学力にも直結すると考えます。
考える力は「実体験」から生まれる
また、考える力は実体験から育成されると考えています。
なぜなら、自分ごととして捉えやすいからと考えます。
具体的には、校外学習や職場・就業体験などです。
社会に触れることで、自分の将来を考えるきっかけに
つながり、考え方も変わっていきます。
ある学年の担任をした時、あまりにも学力
集中力などが低い学年を担任したことがありました。
そのような学年だったので
中学生でありながら小学生のような生徒指導
どの教科も授業が成り立たないなど
様々な課題を抱えていました。
しかし、いざ職場体験になるとどうでしょう
多くの職場から好評の声をいただき
体験期間を延ばしてほしいなどの要望もあったくらいです。
学校で座りながら勉強をするよりも
職場体験のような学校を出て社会体験をする
という内容自体が学年の子どもたちに合っていた
ということもありますが、事前・事後の学習として
子どもたちの気持ちの変容が見てとれたことが成果
だったと感じています。(当時のOPPAシートより)
以上の例のように、事前・事後指導の取り組みと
子どのたちの気持ちや考えの変容を見取ることも
評価につながると感じます。
評価をする4つの視点
では、私が考える評価の4つの視点は
①考えの深さや広がりを評価する
②学習の結果ではなく、過程を評価する
③自分の考えと言動が重なる部分を評価する
④子どもの問いや過程、成果などの質はこだわらない
ということです。
①考えの深さや広がりでは
問いに関する自分なりの解答からさらに問いが生まれる
といったように、どんどんと疑問を解決していく姿勢を
評価することです。
②学習の結果ではなく、過程を評価するでは
各教科の単元には目標がありますが、その達成よりも
どのように課題を解決したか、どのように取り組んだかが
考える力だと感じています。
③自分の考えと言動が重なる部分を評価するでは
プリント学習で自分の考えを書くときに
正解は何となく分かっているので、それらしいことを書けるが
実生活での実行では、書いていることと一致しない
という現状があることは先生方もたくさん体験しているでしょう。
④子どもの問いや過程、成果などの質はこだわらないでは
褒めること・認めることが子どもたちの成長につながると
考えているので、どんな問いや過程、成果でも評価することが
教師として大事なことだと考えています。
以上のようなことを重視しており
記述での評価を進めていきたいと考えています。
また、記述で評価する際には、「できたこと」だけでなく
「できないこと」も記述できると、子どもにとっても
保護者にとっても「苦手が何なのか」分かるので
必要な評価だと思っています。
若手教員によくあるFAQ
Q1.考える力を育てる授業ばかりすると、基礎学力は下がりませんか?
可能性はあると思います。
記事でも述べたように、既習していない内容を「考え」ても
学力はおろか、本来育てるべき「考える力」とも
乖離していると感じています。
また、「気付き」を重視してしまうと「気付けなかった生徒」は
置いていかれることになりかねません。
であるので、基礎知識の「詰め込み」と「反復」による
学力向上と、取り組みの仕方による考える力の育成が必要だと
考えています。
Q2.「主体的・対話的で深い学び」とは具体的に何をすればいいですか?
話合い活動をするだけでなく
「自分で考え→他者と比較し→自分の考えを深める」
と言うプロセスが重要です。
積極的に体験学習を行い、自分の興味・関心を広げることで
自分ごととして主体的に動かざるを得ないでしょう。
また、評価をする際に、積極的にパフォーマンス評価を
取り入れられるといいです。
Q3.考える力を伸ばすには、どんな活動が効果的ですか?
校外学習や職場体験などの「実体験」を通した学びが
効果的です。
人は「やらされる」よりも「やりたい」ことの方が
主体的に考えるものです。
やりたいことは、学校の教科の授業では中々発見しづらいでしょう。
Q4.若手教員として、まず何から意識すればいいですか?
まずは「誰かのまねをする」といいです。
自分がいいと思う人をベースとして授業を形づくり
少しずつ修正していくといいでしょう。
その過程こそが子どもたちの目指すべき姿なのです。
まとめ
※教育の考え方や実践については
他の記事でも詳しく解説していますので
ぜひご覧ください。
→【教員必見】日本の教育は何を残し、何を見直すべきか?
〜学校教育の未来を考える教育改革〜
→【教員必見】5つの教育改革とは?
〜小中高で育てたい思考力と指導の視点〜
本記事では、日本の学校教育の歴史を振り返りながら
「知識記憶中心の教育」から「思考・判断・表現を重視する教育」
へと移り変わってきた背景を整理しました。
また、その中で、教育内容は変化しているにもかかわらず
評価がテスト中心から大きく変わっていない現状と
その理由についても明らかにしました。
最も重要なポイントは
考える力は結果ではなく「学習の過程」に現れるという視点です。
テストの点数だけでは見えない、子どもたちの思考の深まりや工夫
変容こそが、これからの時代に求められる力だと言えます。
では、私たちはこれから何をすべきでしょうか。
まずは、「知識の定着」と「考える力の育成」を
対立させるのではなく、バランスよく指導することが重要です。
その上で、授業や評価の中に
「どのように学んだか」「どう考えたか」を見取る視点を
取り入れていくことが求められます。
小さな実践としては、振り返りの記述を取り入れる
学習過程を評価する、実体験を通した学びを設計するなど
できることから始めていきましょう。
その積み重ねが、子どもたちの「考える力」を
確実に育てていきます。
※関連記事も読むことで、より理解が深まります。
→【教員必見】個別最適な学びの課題と解決策
〜GIGAスクール時代の学習方法〜
→【教員必見】課題解決型プロジェクト学習(PBL)の導入と効果
〜主体性が育つ授業づくり〜
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
拙い文章でしたが、次回も読んでいただけると嬉しいです。






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